信州大学医学部画像医学教室は、昭和26年に放射線医学講座として設立された歴史ある教室で、私は6代目の教授として平成31年4月に就任いたしました。すなわち、信州大学で平成最後に就任した教授ということになります。少しだけ自己紹介させていただきますと、出身は富山県ですが、神戸大学医学部に進学し、卒業後は金沢大学医学部放射線医学教室(当時)に入局しました。信州大学に着任したのは角谷前教授が就任された次の年、2001年4月です。信州での生活は長くなりましたが、これまでに私が住んだ町の中で一番気に入っています。特に、他では見られない澄み渡った青空と季節によって変化する北アルプスとのコントラストが大好きです。
着任した当時を考えると放射線診療の発展はめざましく、技術の進歩とともに放射線科医が持つ「診る力」は格段に向上しました。解剖学的な形態情報はより詳細になり、組織の血流情報、水分子の拡散、臓器の機能、病変の代謝など、形態以上の情報も得ることができるようになりました。ただし、どんなに高度な技術を用いた検査でも、その特徴を知らないと適切に使いこなすことはできません。当教室では、臨床を通して、日々進歩する「技術を使いこなす力」と、見えているものを正しく理解する「見極める力」を育てます。
当教室の研究テーマは別に詳しく記載してあると思いますのでそちらをご参照ください。それぞれの臓器や疾患毎にテーマがあり、世界的にも評価を得ている研究が多くありますので、これからもさらに発展させ国内外へ発信していきたいと考えています。また、他施設や他分野とのコラボレーションも積極的に推進したいと思っています。
日本は欧米と比べて放射線科医が少なく、特に長野県は放射線診断医、放射線治療医ともに不足しています。そのような状況下で放射線科医は多くの画像検査に対応していますが、画像検査はもとより、放射線治療や画像下治療(IVR)も「頭から足の先まで」を守備範囲とするため、放射線科医はgeneralistである必要があります。一方で、私はgeneralistとしてのレベルを向上させるためには、generalistをbaseとしつつもspecialistであるべきだと考えています。多領域のspecialistの育成は、密に情報を共有することでgeneralistの底上げにつながります。さらに、自身の向上を目指し各診療科との連携を推進する、これこそが放射線科医としての醍醐味であり、これにより患者さんに最高の医療を提供できた時はまさに至福です。もちろん、一人前の放射線科医になる道のりは楽ではありませんが、信州放射線科専門研修プログラムは大学病院を基幹病院とし、県内の9施設を専門研修連携施設とするオール信州の体制で行われています。大学で診療はもとよりリサーチマインドの土台を作り、連携施設で土台を固めつつ知識と技術を積み上げるというプロセスを経て専門医を目指してもらいます。昨今は、大都市に研修医が集中する傾向がありますが、信州大学は各診療科が密に連携しており、研修するには大変良い環境です。さらに、放射線科のレベルも高いと自負しておりますので、興味のある学生、研修医は遠慮なく私や教室員に声をかけて下さい。
放射線科領域は、今後も技術の進歩が最もめざましい分野の一つであると思います。そして進歩する種々の技術のうちの一つがartificial intelligence(AI)であることは間違いありません。AIが進歩すると真っ先に無くなるのが放射線科医の仕事だと言う人が世の中にはいますが、これはAIの本質を理解していない人です。これからの医療は、AIをいかに使いこなすかが重要なテーマとなります。うまく使いこなせてこそ最先端の医療を提供できるようになり、その可能性を最大限に活かせるのは放射線科です。
放射線医学の向上、そして長野県における医療の充実を目指して、信州大学および長野県各施設の放射線科医が一丸となって進んでいきたいと思っています。放射線科医の業務は決して楽ではありませんが、やり甲斐があることは間違いありません。ぜひ私達と一緒に魅力ある未来を作りましょう。
信州大学医学部画像医学教室
教授 藤永 康成